慰謝料・養育費・
年金分割

慰謝料

慰謝料とは?

離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって生じる精神的苦痛に対する損害賠償金をいいます。離婚の原因となった行為(不貞や暴力など)自体による精神的苦痛に対するものと、相手方の行為によって離婚を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対するものの両方を含みます。

慰謝料は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償として請求するものです。したがって、相手方に「違法行為」が認められる必要があります。

相手方の不貞や暴力、生活費を渡さないなどの違法行為があり、このような相手方の行為が原因で婚姻関係が破綻し、離婚せざるを得なくなった場合には、慰謝料が認められることになるでしょう。これに対して、離婚の原因が単なる夫婦の性格の不一致による場合には慰謝料は認められません。

慰謝料の支払いを求めるには?

慰謝料の額は、さまざまな事情を総合的に考慮して決定します。考慮事項となるものには次のようなものがあります。

  • 離婚の原因となった行為の程度・割合・態様
  • 精神的苦痛の程度
  • 婚姻期間や別居期間などの長さ
  • 夫婦の年齢、社会的地位、収入、資産、負債
  • 子どもの有無、親権や監護権をどちらが持つか
  • 離婚後の生活状況

離婚に伴う慰謝料の請求は、通常、離婚のときから3年で時効になってしまうので注意が必要です。

離婚に伴う慰謝料の額や支払方法は、まずは夫婦の話し合いで決定されます。

話し合いで合意ができない場合には、家庭裁判所に対して、離婚成立前であれば離婚と慰謝料を求める調停を、離婚成立後であれば慰謝料を求める調停を申し立てることになります。調停では、調停委員が離婚に至った経緯や離婚の原因について、当事者双方から意見を聞いたり資料を提出してもらったりして、話し合います。

調停が成立しなかった場合には、離婚成立前であれば、家庭裁判所に離婚とあわせて慰謝料を求める訴訟を提起することになります。離婚成立後であれば、地方裁判所に訴訟を提起することになります。

不倫相手への請求

相手方配偶者の不貞行為によって婚姻関係が破綻した場合、慰謝料は相手方配偶者だけでなく、不倫相手にも請求することができます。ただし、相手方配偶者が不倫相手に結婚していることを隠していたり、不倫相手に関係をしつこく迫ったりした場合には、不倫相手に対する慰謝料が認められなかったり、認められても金額が低くなることがあります。

相手方配偶者と離婚前であれば、相手方配偶者に離婚と慰謝料を請求する調停と併せて、不倫相手に対して慰謝料を請求する調停を家庭裁判所に申し立てることができます。調停が不調になれば、相手方配偶者に離婚と慰謝料を請求する訴訟とともに不倫相手に慰謝料を請求する訴訟を家庭裁判所に申し立てることができます。

また、相手方配偶者とは別に不倫相手だけを相手方にして簡易裁判所・家庭裁判所に調停を申し立てたり、地方裁判所に訴訟を提起することもできます。

不倫相手に対する慰謝料は、相手方配偶者と不倫相手が連帯して支払うべきものです。したがって、相手方配偶者から慰謝料全額の支払いを受けたときには、不倫相手に重ねて請求することはできないことになります。

養育費

養育費とは?

養育費とは、子どもを養育するために必要とされる費用です。衣食住の費用、医療費、教育費など、その家庭の生活レベルに相応した自立した社会人として成長するために必要な費用が含まれます。

子どもを扶養する義務は両親にあります。離婚に際して、相手方配偶者を子どもの親権者と定めたときでも扶養義務があることに変わりはありません。離婚したあとは、それぞれの資力に応じて養育費を負担することになります。子どもを引き取って育てている親に対して、子どもを引き取らなかった親が支払うことになります。

子どもがいくつになるまで養育費を支払うかについては、民法など法律で定められているわけではありません。各家庭の実情に合わせて、18歳に達するまで、成人に達するまで、あるいは大学を卒業するまでなどと定めています。

養育費の支払いを求めるには?

養育費の額や支払方法は、まずは夫婦の話し合いで決定されます。合意ができたときには、決定した養育費の内容を明確にし、後日の争いを避けるため、離婚協議書を作成して明らかにしておくべきです。また、支払が滞ったときに強制執行ができるように離婚協議書を公正証書で作成しておけば、養育費の支払い確保にさらに有利です。

話し合いで合意ができない場合には、家庭裁判所に対して、養育費を求める調停を申し立てることになります。調停では、調停委員が父母双方の収入、資産、生活状態、子の年齢や数などについて、当事者双方から意見を聞いたり資料を提出してもらったりして、話し合います。

調停が成立しなかった場合には、審判手続に移行し、裁判官が審判で判断を示します。

審判に不服のある当事者は抗告を申し立てることができます。

年金分割

年金分割とは?

年金分割とは、婚姻期間中に納めた保険料の額に対応する厚生年金(共済年金)の合計額を当事者で分割するものです。これは、年金自体を分割するのではなく、分割された分の保険料を納付したものとして、それに基づき算定された厚生年金を将来受け取るものです。

年金分割には2種類あり、1つは「合意分割」、もう1つは「3号分割」と呼ばれています。

なお、離婚が成立してから2年が経過すると、年金分割の請求はできなくなるので、注意が必要です。

合意分割

合意分割は、平成19年4月1日以降に離婚した場合に、当事者からの請求により、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を当事者間で分割することができる制度です。按分割合の上限は2分の1で、当事者間の合意または裁判手続で定める必要があります。

当事者間の話し合いで分割割合を合意したときには、公正証書で合意内容を明らかにしなければなりません。

当事者間の話し合いで合意ができない場合には、離婚調停の手続の中で按分割合についても話し合うことになります。既に離婚している場合には、家庭裁判所に年金分割の割合を定める審判または調停の申立をします。審判の申立があると、裁判官が按分分割割合を決定する審判を行い、調停の申立があると、調停委員が間に入って按分割合について話し合う手続を行います。

3号分割

3号分割は、平成20年4月1日以降の婚姻期間について、専業主婦(夫)すなわち第3号被保険者であった者の請求により、相手方の合意無くして一律に年金の2分の1が分割されるものです。

専業主婦(夫)だった期間は、相手方の厚生年金の保険納付実績を自動的に2分の1に分割できることになります。

平成20年3月以前の婚姻期間については、3号分割をすることはできず、合意分割をしなければなりませんので、注意が必要です。